てんかん発作のふり返り~銭湯の脱衣場にて~

銭湯で発作が起きたときのツイートにいろんな人が「いいね」をしてくれていたので、自分でもちょっとふり返ってみました。

ふり返って思うことは、「防げる発作だったな」ということと、ヘルプカードでまわりに伝えることで、発作への対応はうまくいった」ということです。

 

まずは状況を説明しましょう。

1年前の1月のことです。こけしは近所の銭湯にひとりで行き、入浴後、脱衣場で着替えた後に発作が起こり、しばらく動けなくなりました。

なんで銭湯にいったかというと、このときの結果は逆になってしまったのですが、「てんかん発作を減らそう」と思ったからなのです。発作を起こす要因は飲酒やストレス、不眠などいろいろあるのですが、「入浴」もそのひとつです。

個人によって違いもあり、入浴しても発作は起きたことはない、という患者さんもいます。こけしは、小さいころから入浴時、特に洗髪後が起きやすかったです。

とは言っても、毎日お風呂に入っている中で、月に1回あるかないか、くらいの確立でした。現在は、以前紹介したタスク管理などのおかげで、もっと減らせています。タスクペディアの使いみち~入浴時のてんかん発作を減らす~

 

 

それでも、入浴、洗髪をすると発作までいかなくても「前兆」を感じることはあるので、「起きやすい」ことは確かです。くわしいことは分からないのですが、主治医が調べてくれたのでは「血行がよくなる」のが要因になるみたいです。

でも、昔からお風呂は大好きで、よく家族とも温泉にでかけていました。温泉や銭湯などの大浴場では、ほとんど発作が起きたことがありません。明らかに家より起きにくいです。閉塞感とか明るさとかが関係しているんじゃないかと感じるのですが、それは研究中です。

そんなわけで、「家のお風呂だけより、定期的に銭湯に入ったら、発作も減らせるんじゃないか」と考えたわけです。

 

初めていく銭湯でした。行く途中、少し幻聴がありました。数年前に発作がきっかけで救急車のサイレンの幻聴が聞こえるようになったのですが、現在は発作とは関係なく、ストレスがたまるなどすると聞こえるように思います。あまり通らない道に緊張したせいかもしれません。

銭湯は、脱衣場の横は一面窓で外に出られる造りで、窓の外は庭のような感じで、トイレも外で縁側を歩いたところにありました。時刻は夕方だったので、窓の方に行くと薄暗い感じでした。「あまりこっちの薄暗いほうに行かない方がいい気がするな…」と感じました。なんとなく不安な感じがしたのです。発作の前兆でもなんとなく「ここにいない方がいいな」と感じることはあります。明るい広い方に行きたいと感じることも多く、移動したら前兆が治まったこともあります。

人によって違いはあると思いますが、主治医は「発作が起きると外に行きたくなるという患者さんはけっこういるね」と言っていました。

そんなわけで「幻聴」「不安な感じ」があったわけですが、どちらもかすかだし、せっかくきたし、お風呂に入ることにしました。「銭湯は発作が起きにくい」という過信もありました。

銭湯では家と同じように 体を洗う→普通にお風呂に入る→温冷浴→洗髪 の順で入りました。

電気風呂があって、てんかん患者などへの注意書きもあったと思います。でもせっかくなので入ってみました。温泉施設などで特殊なお風呂にはよく入っていて発作が起きることはなかったですし、同じようにてんかん患者に注意書きのあるゲーム画面などでも特に問題が起きたことがないので、大丈夫だろうと思いました。これも個人差がある話で、同じゲーム画面でも発作を起こす患者もいれば全然影響ない患者もいます。

そんなに長くは入りませんでしたし、びりびりしたけど特に何ともなかったです。

湯船の温度はけっこう熱かったかと思います。温冷浴は1分ごとに水とお湯にくり返し入るのですが、水はシャワーを使いました。湯船から出るたびに、高低差もあって、温度が熱いのもあってか、くらっとするのを何度か感じました。

「いつもとちがう」とは感じたわけです。自分の感覚では、電気風呂よりこっちの方が発作に影響したように思います。

でも、そのまま続けて、洗髪もしてお風呂から出ました。洗髪中は特に何ともなかったです。お風呂場にいたのは30~40分くらいだったかと思います。

そして、身体を拭いて、着替えた後、不意に発作が起きました。気分が悪くなり、ロッカーの前で動けなくなりました。こけしは右手のみけいれんをすることは多いのですが、自分では起きていたかは分かりません(分かるときもあります)。

脱衣場には他にも数人お客さんがいましたが、何も気づいていないようすでした。立ったままだったかひざをついたかは覚えていませんが、ロッカーの前でじっと動かずにいる状態で、しばらく経ちました。視覚にも異常が出ていましたが、お客さんがいることなどは分かりました。

で、他のお客さんに「どいてほしい」と声をかけられて、動けず話せずいたので、まわりも様子がおかしいと初めて気づきました。まわりのお客さんは「湯あたりじゃないか?」と言っていて、「そう見えるんだな~」と思いました。

以前書きましたが、こけしは発作が起きたときのためにヘルプマークヘルプカードを用意してあります。てんかんで助けを求める時~ヘルプマーク・ヘルプカード

この時、ヘルプカードはローカーに入れたバッグの中でした。発作中は記憶に障害がでることもありますが、ロッカーの中にあるはずだがどこに入っているかはっきり思い出せない、という状態でした。あるはずなのは分かるので、何とか探して取り出し、まわりのお客さんに渡しました。言葉はひとことも出せなくなっていましたが、物を取り出すくらいは動けたってことですね。全身硬直することもあるので、そこは本当動けてよかった~と今思います。

あとはすぐに出せるように手前に置いておくんだったと思いました。このことがあってから、外出時はすぐに出せる位置につけておくようになりました。

で、ヘルプカードの説明を読んだお客さんたちは、書いてある通り、静かに見守ってくれました。椅子に座らせてもらったと思います。それから4~50分後、発作が治まって動いて話せるようになりました。お客さんのひとりは、こけしにペットボトルのお茶を渡してくれました。

髪の毛はまだ乾かしていなかったので、ドライヤーで乾かし、帰りました。発作中、発作後しばらくは、いつもできていることができない、思い出せないといったことがありますが、このときもそうでした。「小銭を入れて動かす式のドライヤーだ」というのは分かるのですが、動かせません。いつもなら使えるというのは分かるのに使い方がどうしても分からない、もどかしい状態です。他のお客さんが使い方を教えてくれて、髪の毛を乾かすことができました。

発作後の頭痛がガンガンしてはいましたが、ふらつくなどはないので、ひとりで歩いて家まで帰りました。飲み過ぎて頭痛がしながらも歩いて帰るのと同じイメージです。頭痛だけなので、酔っ払いよりむしろ楽かもしれません。

発作後に大丈夫?と思うかもしれませんが、こけしの場合、歩く分には平気なことが多いです。職場など遠くで発作が起きて帰るときなどは、タクシーを利用することもあります。

帰る前に、家族に発作が起きたこと、帰ることはLINEで伝えました。スマホもいつも通り使える状態には戻っていましたが、頭痛はつらいので「てんかんスタンプ」を作っておいてよかったです。

 

帰るときに、お客さんたちには挨拶したのですが、いつもどおりに話せるわけではないので、ちゃんとお礼を言っていなかった気がします。「すみません」「大丈夫です」などは言っていると思うのですが「ありがとうございます」は言いそびれていると後から思います。なので、「ありがとうカード」を作りました。

 

 

このことがあって、「ちょっとでも違和感があったら入浴は止める」「外出時は常にヘルプマークは見える位置につけておく」ようになりました。

銭湯に通うのはちょっとやめておくことにしましたが、家での入浴時の発作は確実に減らせていると思います。