「タスクペディア」とはタスク管理支援ツールで、無料で誰でも使えます(https://www.taskpedia.club)。
「タスク管理」は「仕事」のイメージが大きいかもしれませんが、日常生活に広く活用できます。
こけしは2018年から、てんかんの治療に「タスクペディア」を活用しています。
発作を抑える方法は、薬や手術だけではありません。食事・運動療法、ストレスや疲れを減らすことも効果があります。こうした日常生活の中での治療をやりやすくするツールのひとつが「タスクペディア」。
今回は、入浴のタスク管理で発作を減らせた例を紹介したいと思います。
こけしは色んな状況で発作が起きますが、一番多いのはお風呂、特に洗髪中やその後です。理由ははっきり分かりませんが、他のてんかん患者でも、同じようなことを言う方はいるそうです。
でも、入浴や洗髪を避けるのは難しい…。垢やストレスもたまります。
それに、毎回発作が起きるわけでもありません。こけしの場合、発作は月1回程度、毎回が入浴中ではないし、年間で見たら、なにごともなくお風呂に入る日の方がずーっと多いです。発作があっても、意識を失うことはなく、溺れたりケガしたりもなかったです。
子どものころからお風呂で発作が多いとは感じていたけど、軽い発作で、それほど気にしていませんでした。お風呂も温泉も大好きでした。
社会人になって、発作が重くなり「お風呂に入らなければ、発作が起きなかったのに…」と後悔をくり返し、だんだんお風呂が怖くなってきました。
入浴方法を工夫したり、ドライシャンプーを使ったり、自分なりに色々試しましたが、それでも入浴時の発作は度々起きていました。
さて、タスクペディアではまず、入浴の工程を書き出して、整理してみました。
①日常的入浴(体を洗って湯船につかる)→②温冷浴(入浴療法)→③洗髪(発作が起きやすいので最後)と3つに分け、それぞれの間に、一度浴室の外に出る「リセットタイム」を作りました。呼吸を整え、気持ちを切り替えて「ひとつずつ集中して片付ける」ことで、落ち着いて動けるのを感じました。時間や体調によって「今日は①だけ」のように分けて考えやすくもなりました。
タスクを作る前も工程はほぼ同じだったけど、まとめて「入浴」と考えていてたので、全部終わるまで落ち着けず、不安も必要以上に感じていたのだと気付かされました。
これだけで、すごく不安が減って動きやすくなったのです。
次に、「発作や前兆があったときの対応」もタスクに組み込みました。
こけしは発作の前に「前兆」や、前兆ほどではない「嫌な感じ」があることが多いですが、入浴や洗髪の前や最中だと、毎回どうするか迷っていました。
「このくらいなら、大丈夫かな」と洗髪を続けて発作が起きてしまうことが何度もありました。「油断しすぎだろ」と思うかもしれませんが、実際大丈夫なこともあるので、判断が難しいのです。「ちょっと雨降りそうな気がするけど、大丈夫だろう」と思って出かけたら、急に土砂降り、みたいな感覚です。赤信号に代わりそうでも、渡れそうだったら迷うでしょう?
「入浴タスク」では、「前兆が少しでもあったら、すぐ入浴を止めて外に出る」と決めました。「赤信号に代わりそうだったら、迷わず止まる」ことにしたのです。
タスクで決まっているから、余計なことは考えずに動けて、これで「起きていたかもしれない発作」を確実に減らせたと思います。
他に「入浴前に家族に声をかける」「定期的に洗髪をする」といった、ついつい忘れがち、あいまいだったことも、タスクにして実行することで、習慣にしやすくなりました。
今も正直、お風呂の前はどうしても不安がありますが、タスク通り進めることで、スムーズに動けます。そして「発作なく無事に入浴を達成」をくり返し、気持ちいい時間を楽しめるようになりました。以前は洗髪中やお風呂から上がった直後、ドライヤー中などに度々あった前兆や発作が、もう何ヶ月もすっかり影をひそめています。
発作の可能性は決してゼロにはなっていません。でも、入浴を効率的に進められ、ストレスが減ったことで、確実に発作が起きにくくなったと思います。
発作に対して適切に準備していると自信も持てたので、もし、今後入浴時に発作があったとしても、前よりショックは受けないかな、とも思えています。
てんかん患者の中には入浴を全面禁止される方もいるそうです。お風呂に入ると100%発作が起きるなら仕方ないかもしれませんが、そうではないのに禁止されて納得できない思いの方もいるのではないでしょうか。「入浴」をタスクとして整理すると、発作のリスクを避けるためにできることが、他にも見えてくるかもしれません。