パープルカフェで、てんかん患者の方たちと話していて「今、世間で新型コロナウイルスに向けられる目は、てんかんへの目と似ているように感じる」という話が出ました。
こけしも、連日の新型コロナウイルスの報道を見て、同じように感じていました。
「コロナに負けるな」「コロナを倒せ」といったウイルスを「悪」と見る目。
そして、ウイルス感染者や、医療従事者などへの過剰な差別。感染後に回復したのに、職を失ってしまった方もいると聞きます。
それは普段、多くのてんかん患者が感じているものと似ているのです。
みんな、なりたくててんかんになったわけではありません。そして「てんかん」は世の中にごまんとある誰もがかかる可能性のある病気のひとつです。
それなのに、嫌悪や差別の目を向けられ、理不尽に思いながらも「てんかん」を隠している人たちはたくさんいます。
この極端な差別の目はどうして生まれるのか。ひとつの要因は「未知のもの」への不安や恐怖ではないかと思います。
「新型コロナウイルス」という言葉を初めて聞いて、何だかわかりましたか?
こけしは最初、聞きなれない言葉に、不安を覚えました。
「インフルエンザウイルス」は多くの人が知っていて、毎年感染の予防をしているでしょう。
他にも「ウイルス」は世の中にたくさん存在していますが、毎年誰かがかかる風邪の原因のひとつに「コロナウイルス」があると、「新型コロナウイルス」をきっかけに知りました。
「新型」の何が問題かというと、新しいために抗体を持つ人がいないので、誰にでも移ってしまい、感染者が大量に出ると医療崩壊につながってしまうこと。
また世界中で問題になっていますが、それはウイルスだけでなく、人間の生活の変化も関係しています。一日で地球の裏側まで行ける世の中だから、あっという間に広がったのです。
感染症の流行は、昔から何度もあり、これからも数年に一度は起こりうることです。新型コロナウイルスは、人類を滅ぼすために未知の世界から現れた侵略者ではありません。
世の中にたくさんあり、今後も新しい物が生まれ続けるのであろうウイルスのひとつ。今は誰にでも移る「新型」も、感染者が少しずつ増えて、抗体を持つ人が増えれば、どこかで感染の歯止めが利くようになります。
こけしは主治医に新型コロナウイルスについて上記のように説明してもらい、落ち着きました。決して理解できないことや対処できないことが起きているわけではないのです。
重症者や死亡者も多数出ており、その方たち、遺族の方たちはとてもつらいことでしょう。ウイルスを憎みたくなる気持ちも理解できますし、亡くなった方たちをないがしろにするつもりは決してありませんが、毎年、インフルエンザウイルスなどの感染がもとで亡くなる人は数千人いるそうです。新型コロナウイルスだけが特別なわけではありません。そして、国内で毎年約1000万人はいると言われるインフルエンザウイルスの感染者のほとんどは自然に自己治癒力で回復するそうです。
重症者、死亡者を減らすことはもちろん大切なことですが、そこだけに注目すると、悪いイメージだけが広がってしまいます。その結果、感染者やその家族の中には無症状や軽症でも、不安や恐怖から生まれる偏見、差別の目を向けられ、病気以上につらい思いをしている人がいます。てんかん患者も長い間、「差別の目」を向けられてきました。
人間の偏った情報やイメージはときに、病気そのもの以上の問題を生んでしまいます。
感染を広めるのも、偏見による問題を生むのも、人間です。
逆に言えば、偏りのない情報の発信や、ひとりひとりの意識で減らしていける問題はたくさんあるのだと思います。