「手術」はてんかんの治療法のひとつ。こけしも手術を検討したことがあります。
ひとくちに「てんかん」といっても、原因や症状は様々です。手術は簡単に言うと、脳に問題があっててんかんが起こる場合に、その原因の部分を取ってしまうってこと。
もちろん後遺症などのリスクや、再発の可能性もあります。それは、他の色んな病気やケガなどの手術も同じですよね。
こけしが初めて「手術」を提案されたのは、休職して治療に専念していたころ、当時の主治医(てんかん専門医)からでした。でも「いや~、手術はいいです」と断りました。
発作はなくなって欲しいけど、手術まではいいや、と思っていました。
…だって、怖くないですか?頭を切るんですよ?!
こけしは、口の中切って縫うとか犬にかまれて切れた涙腺縫うとかはありますが、大きな手術の経験はありませんでした。普通に尻込みしました。
それに、今の治療でもっと発作を減らしていけるだろうって思っていたのです。
でもその後、新しい薬で一時発作が止まったと思ったら再発したり、重い発作が続いたりして、心折れちゃったこけしは、「手術を考えてみようと思う」と主治医に話しました。
余談ですが、毎月の生理時にてんかん発作があって、手術で子宮を取った女性がいると聞いたことがあります。しかし、手術後も発作は起きてしまったそうです。
「発作がなくなるなら、子宮がなくなっても良い」と思った気持ち、理解できる気がします。そして、手術後に発作が起きた時の気持ちを想像すると、痛ましくてたまりません…。
主治医に説明されたのは「脳の海馬を取る」という方法。
「海馬」は側頭葉の一部で、記憶に関する働きをしていると言われます。側頭葉は左右に1つずつあるので、片方を取っちゃっても大丈夫だと言われました。…腎臓移植みたいですね。
でも2つあるからって、「本当に大丈夫なの?!」って思いますよね。
普段から、発作中に自分の名前が分からなくなったり、友達と話すと昔のことを人より覚えていないと感じたり、「高齢者の側頭葉てんかんは認知症と間違われやすくて、発作で消えた記憶は元に戻らない」なんて話も聞いたりして、「自分の記憶が消えているんじゃないか」と不安でした。
こけしは、発作の時に右手だけけいれんが起こることが多く、その他の色んな症状から、おそらく「左側頭葉」に問題がある可能性が高いのですが、特定されてはいませんでした。
脳波検査で「脳波に異常がある」、MRI検査では「右前頭葉が少し肥大している」と言われたことはあるけど、左側頭葉に傷などのはっきりした問題が見付かったことはありませんでした。
それで、手術に向けてMRIより詳しいことが分かる検査を受けることになりました。放射線での軽い被ばくはあるけど、危険はないということでした。検査後に特定のトイレを使わないといけないのを忘れて普通のトイレに入って、警報を鳴らしちゃったことを覚えています。
そして検査の結果、何が分かったかというと…何も分かりませんでした。
「目で見える異常はないから、手術はできない」と説明されました。こけしのてんかんの原因は、傷などではなく、脳の中にある「目に見えない異常」らしいです。
この結果に、ものすごくガッカリしたと同時に、内心ちょっとホッとしてもいました。
やっぱり手術は怖くて、覚悟はできていなかったので、もう手術は考えなくて良いと分かって、気持ちは楽になりました。
でも、「新しいことが分かる」と言われて期待して検査を受けたので、「詳しいことは分からなかった」とあっさり説明されて、正直主治医には不満を覚えました。
「詳しいことが分からない場合もあり得る」と事前に説明してもらえたり、「申し訳ないけれど、詳しいことは分からなった」と言ってもらえたりしたら、モヤモヤしなかったかも、と思ってしまいます。
医者も検査も万能ではないのだから、仕方ないことではありますが…。
そんなわけで手術はできませんでした。その後、服薬と運動・食事療法を続け、自宅勤務になって通勤のストレスがなくなって、現状はかなり発作が減り、落ち着いてきています。
こけしは11歳で発症してから10年以上、服薬のみで、手術などの治療方法を知らずにいました。
「服薬」が治療の中心な場合が多いと思いますが、「手術」や、他にもてんかん治療のツールが色々あることを、患者が知り、選択できることは大切だと思います。