最近、オンラインで茶話会的に開催し始めた『パープルカフェ』で、毎回上がる話題に「薬」があります。パープルカフェの参加者は発作が普段からある人ない人、手術やケトン食など服薬以外の治療をしている人、さまざまですが、大体みなさん1~数種類の薬を飲んでいます。
同じ薬を飲んでいて「あ、自分も~」と盛り上がることも多いし、副作用の話や、新薬を何度も勧められてつらいといった話もよく出ると思います。
てんかんの治療の基本は「抗てんかん薬の服用」です。
てんかん患者の7~8割は服薬で発作を抑えられると言われ、手術で発作がなくなった後も服薬は続けているという場合もあり、てんかん患者のほとんどは毎日の服薬が必須です。
でも、こけしは薬について、長い間よく知らなかった、そのために色々と失敗があったと感じています。
「カルバマゼピンを飲んでいる場合、グレープフルーツを取らないように」はてんかん患者ではけっこう有名な話かと思います。
こけしは11歳からずっと飲んでいましたが、子どものころはよくグレープフルーツを食べていました。薬が少量だったからか特に問題はなく、親も食べさせていたということは、薬への認識がなかったのでしょう。見落としなのか、医者や薬剤師からの説明が足りなかったのか、今となっては分かりませんが…。
20代後半のある日、もらい物のグレープフルーツを2個一気に食べてフラフラになって、初めて認識しました。
ラファミド八王子の利用者様にもてんかん患者で、カルバマゼピンを飲んでいて、グレープフルーツ入りの飲料を飲んでいる方がいました。本人も認識がなかったようですし、それにグレープフルーツ入りの飲料は成分表を見ないと気付かずに飲んでいることも多いもの。同じ作用の果物は他にもあるし、気付かずに異常をきたしていたということ、意外とあるかもしれません。
また以前は発作が起きたとき、薬を飲む直前だと、ものすごく慌てました。
「薬を飲んでないから発作が起きたんだ!」「発作を止めなきゃ!」と慌てて薬を飲もうとしたことが何度もあります。発作中なので上手く動けず薬をばらまいたり口の中で呑み込めず苦い思いをしたり…。
でも、抗てんかん薬は基本、口から飲んだ後、消化管で血管に吸収されて脳まで運ばれてやっと効くものです。起きてしまった発作を飲んだ瞬間に止めるものではありません。毎日飲むのは血中濃度を安定させるためで、今日の服薬がまだでも、血液中の薬は十分な量あるのです。
そういう認識がなかったので、無駄に慌てて不安になっていたのです。
あとは自分が服薬では発作を抑えられない「難治性てんかん」で、数種類の薬を処方されるのが普通だと知ったのも、小児科で1種類の薬だけ処方されて10年以上経った後でした。
こうした自分自身の経験の他に、こけしは障害者支援の中で、不必要に処方されて余っている薬、ドクターショッピング、オーバードースや服薬拒否などの、医療費増大や患者の命に関わることもある問題を見てきました。
それらの要因のひとつは「薬への妄信、無知」だと思います。
病気になると「病院に行って薬を出してもらえばよい」と考える人が多いかと思います。
だからこそ今「薬やワクチンがない」新型コロナウイルスに不安を覚える人が多いのではないでしょうか。そのために「新型コロナウイルスに有効」という情報に飛びつき食品や医療品が品薄になってしまう問題もくり返しているのではないかと感じます。
しかし「薬」「ワクチン」はそれさえあれば大丈夫という万能のものではありません。
これだけ医学が発展した現在も「風邪薬」はできていないそうです。今ある「風邪薬」は病気そのものを治すわけではなく、症状を軽くするもので、例えばインフルエンザの「タミフル」は発熱期間を少し短くするもの。基本、人間は自己治癒力で風邪を治すのです。
また「ワクチン」は軽く病気にかけるもの。その後ウイルスへの抗体を作るのは、自分の身体です。それにどんな薬にも「副作用」がありますし、予防のための「ワクチン」でインフルエンザを発症してしまうといったこともあります。
抗てんかん薬も、決して「てんかん」を治す薬ではなく、「てんかん発作」を抑える薬です。
「病気は薬を飲めばいい」という単純な話はどんな病気にもないでしょう。
薬はあくまで治療法のひとつ。薬を上手く使って治療を進めるために、薬による危険を避けるために、薬以外にも目を向けるために、「薬とは何なのか」患者が知ること、医療従事者はそれを伝えることが必要だと思います。