「てんかん」というと、普段は関わりないけど、自動車事故のニュースで耳にしたという人も少なくないかと思います。
なぜニュースで取り上げられるかというと、「てんかん発作が直接事故の原因になるから」、また事故を起こした人はてんかんを隠して、つまり「違法に免許を取得している場合が多いから」でしょう。
てんかん発作は人によって様々ですが、意識を失ったり身体を動かせなくなったりすることがあります。短時間でも、運転中だと大事故につながりかねません。
ただ、てんかん患者の大半は治療で発作を起こさず生活できているそうです。
以前、日本ではてんかん患者は全員、免許取得不可でしたが、平成24年から、条件をクリアしていれば免許が取れるようになりました。こけしが20歳のころです。
条件とは簡単に言うと「2年以上発作を起こさない」こと。他に睡眠中の発作のみならOKなど、細かい規定もあります。免許を取る際には主治医に診断書を書いてもらって、公安委員会に提出します。
…と説明しておいて実は、こけしは運転免許を取れる歳どころか、社会人になってからも、「自分が運転免許を取れない」と全然知りませんでした。
大人になったら普通にできると思っていました。周りの友達と同じように。
社会に出て知るまで、病院も学校も家族も、誰も教えてくれませんでした。
いつどこで知ったかというと…なんと、教習所で運転の真っ最中でした。
最初に就職した会社を発作のためクビになり、フリーターをしていたころです。
それまで免許を取ろうと特に考えていなかったのですが、時間もできたことだし、将来を考えてそろそろ取っておくか、と思ったのです。
講習を順調に進め、8の字走行の途中、初めて運転中に発作が起きました。数秒か数分気分が悪くなる軽い発作だったと思います。
運転を中断して、講師に「てんかんの発作」だと話しました。そこで初めて、「てんかんだと運転免許の取得に条件がある」「現状では、免許を取れない」と教えられたのです。
ガーーッン!!って感じです。もう結構なお金払っているのに…聞いてないよ…!
でも、あきらめざるを得なかったです。
もし教習所で発作が起きなくても、運転免許取得の「質問票」には「過去5年以内に意識を失ったことがあるか、身体が動かせなくなったことがあるか」という項目があるし、遅かれ早かれ知ることになったでしょう。早めに分かって良かったです。まあもっとずっと早く知りたかったけど…。
しかし、「教習所に行く前に気付くんじゃないの?」「そもそも、発作あるのに運転は危険だと思わなかったの?」とツッコまれそうですね。そう思いますよね~。でもね…自分では気付かないもんですよ!
こけしは、教習所に行った当時、発作が起きても意識はあって、数分でいつも通り動けるようになるし、発作前は大体いつも「起きそう」という前兆がありました。それと、てんかん以外に特別病気はなく健康診断はオールA。交通事故にあったことも起こしたこともないし、自分では、自動車の運転に特に不安は感じなかったのです。
頭痛や腹痛、熱出たり気分悪くなったりケガしたり、突然調子悪くなって動けないことは、誰でも時々ありますよね。でも、普段は何事もなく生活できていたら、自動車の運転はできない、と思いますか?
こけしのように「てんかん」の制限を知らずに運転免許を取ろうとする人、また「自分は大丈夫だろう」と運転免許を取ってしまう人もいるのではないでしょうか。
しかし、自分で分かっているつもりでも、いつどんな発作が起こるかは分からないです。運転中に発作が起きたら実際どうなるかも、起こってみないと分かりません。
でも、事故が起きてからでは遅いのです。
てんかん患者が、ルールに沿って免許を取れるよう、運転免許取得の条件について知る機会を持てること、自分ひとりで考えずに主治医などに相談できることが重要だと思います。
それともちろん、世の中のてんかん患者には、危険な発作なく過ごせていて、安全に運転をしている人もたくさんいるでしょう。
「てんかん」=「自動車事故」という悪いイメージだけが広まってほしくないと思います。