11歳で発作が起きた後、親に「 てんかん 」はきびしく口止めされました。
「でも何で隠すんだろう…?」
「小説に普通に出てくる病気だし、小説の中では隠していなかったし」
こけしはもし口止めされていなかったら、 友達 に話す気まんまんでした。
小さな町ですし、救急車で運ばれたことはもう知られていて、しかも「おもちをのどに詰まらせて倒れた」なんてうわさもされていました。
11歳のこけしには、「病気で倒れた」ことより「おもちをのどに詰まらせて倒れた」と思われていることの方が、ずっと恥ずかしかったです。
「いやいや、おばあちゃんじゃないんだし!ていうか、倒れたせいで食べられなかったし!おもちじゃなくて、『 てんかん 』ていう病気なの!!」とちゃんと説明したかったのです。
それで、こっそり友達一人だけに話しました。「誰にも言わないでね」とお願いして…。
誰かには本当のことを知ってもらいたかったし、別にただの病気の話だから平気だと思っていたのです。
それに、口止めされると言いたくなっちゃうものです。
すると、みんなに「こけしは『 てんかん 』だ」とぶわーっと広まりました。
まぁ、はっきり覚えていないので、実際はほんの数人だったかもしれませんが、ショックでした。
約束をやぶられたこともだけど、「親にばれたらどうしよう」という気持ちの方が大きかったと思います。それと同時に、みんなの反応に「やっぱりお母さんの言う通り、人に言っちゃいけないことだったんだ」と思い怖くなりました。
そして、「もう誰にも話さないようにしよう」とかたく決めました。
こけしは親からも 友達 からも、本当に「 孤独 」になったのです。
今思えば、 友達 もこけしと同じく、ないしょ話を言いたくなっちゃっただけなのでしょう。
そして、こけしと同じく「てんかん」が何か知らなかったと思います。その後、人のうわさも七十五日、みんなすぐに忘れてしまったようでした。
大人になってから「てんかん」だと話してみても、「よく知らない」という反応が多いように思います。あの時、隠していなかったら、どうなっていたのでしょう…?
もし子供の時、 友達 に「てんかんなんだ」と話したら、今と同じように「そうなんだ」「それって何なの?」と反応されたかもな、と思います。そして普通に話せた気がします。
もしかしたら誤解や偏見で傷つくこともあったかもしれません。でも少なくとも、「 孤独 」にはならなかったと思うのです。